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異業種転換啓発事業  先進地事業視察実施報告

1.実施年月日
 平成15年10月6日(月)〜8日(水) 3日間

2.視察先
・長野県北佐久郡立科町大字芦田2000-1
             三矢工業株式会社
・山梨県都留市法能宮原中野2504
             山英建設株式会社

三矢工業 「たてしなファーム」にて、フルーツピーマン栽培を視察した
3.視察参加者等
・建設業協会会員
16
・その他関連業界
3
・当機構運営委員
4
・当機構職員
2
 
  山英建設 炭窯にて、担当者の説明に聞き入る
4.視察概要
・総括
 異業種転換啓発事業、先進地視察の実施に当たり、島根県内で倒産件数の最も多い業種、それは建設業であり、全国有数の公共事業県であるがゆえに現下の厳しい経済環境と国の補助金等に係わる政策の変更に伴う公共事業削減の流れの中で、取り分け中小企業が大半を占める当県では長期的視点に立って雇用を少しでも好転させるため、建設業にスポットをあて視察研修を去る平成15年10月6日より8日の3日間で実施を致しました。
 この度の視察は「循環型産業を目指して農業分野進出」の長野県、三矢工業(株)と「廃木材を使ってシックハウス症対策の室内ボード開発」の山梨県、山英建設(株)の2社を選び実施致しました。
 2社共に20数年前より建設業の今日を予測しながら日々企業のアンテナを高くし、情報収集につとめ、一つ一つ新分野事業に挑戦された中で先述しました事業がそれぞれ軌道にのりつつある実態を視察研修しました。
 その間には資金、事業のノウハウ、人材確保、販路等、沢山の難問と取り組みながらこられた話しの中では参加者からは熱心な質問が飛び交い、時間を忘れる程で、この度の視察が参加者にとって有意義であったことを実感致しました。
 もう一つ、経営のソフト面で、三矢工業(株)の安江社長の経営理念である「環境、地域との共生」に強い共感を覚えました。
 例え、ハード面で成功したとしても、「環境、地域との共生」の理念のない企業は長い視点で繁栄はあり得ない。そんな思いを強くして視察研修を終了いたしました。

〇 各視察先 新分野進出取組内容

*三矢工業(株)
 1.新分野への取組のテーマ
 循環型産業をめざして農業・蓄ふん処理事業に進出。
 ウッドチップリサイクル事業に進出。環境ビジネスをめざして土壌汚染浄化事業に進出。

 2.当該取組の内容
 循環型産業は大きく3つの事業から成り立っている。
 (1)「ウッドチップリサイクルシステム」。建設現場や森林整備ででる根株、枝や木材の廃材を移動式木材破砕機でチップにする。次に小さなチップは堆肥化して農家へ販売したり、基盤材吹付や法面緑化に利用する。比較的大きなチップは炭化工場へ運ぶ。
 (2)「連続炭化装置による炭と木酢液の製造」。炭と木酢液は販売商品とする。
 (3)「連続炭化装置の廃熱利用温室栽培」。

 3.当該取組との出会い
 長野県の北佐久郡は寒冷な土地柄であるが、熱源が確保できればハウス栽培が可能になる。その熱源を産業廃棄物である伐根や間伐材の炭化装置で賄えれば、一石二鳥である。値もつかず放置されている間伐材の有効利用につながれば森林の整備を促進することになる。そこで長野県北佐久郡浅科村に炭化工場を建設し蓼科高原工場を設立し循環型の産業に挑戦することになった。

*山英建設(株)
 1.新分野への取組のテーマ
 建設工事の際あるいは森林管理上伐採される廃木材を燃焼させて炭をつくり、粉末状に砕いたものを原料としてボードを製造し、販売する。ボードは、有害化学物質の吸収、脱臭性能があって、シックハウス症候群対策に有効な付加価値を備えている。

 2.当該取組の内容
 間伐など人工林から廃材として得られる木材は杉、ひのき類に多く、これらは炭に焼いたとしても燃料炭に適さない。
  一方、炭には微細化学物質を吸着・吸収する性質があることは以前よりわかっていた。
 燃料炭に適さない炭の吸着性を利用、さらに、炭を製造する際の焼成温度の違いによって吸収する物質が種々異なる点に着目し、3段階の焼成温度で焼き分けた炭と、貝殻を焼成、粉砕したものを原料として、海草のり、あるいはでんぷん等自然物をバインダーとしてボード状の製品を製造する。
 その結果、本製品(製品名:サイエンスボード)は、広い領域の有害化学物質を吸収して空気から取り除く性能を有することとなり、現在問題となっているシックハウス症候群に有効な建材として完成した。
 脱臭効果も大きく、快適空間創造に役立つ。有害物質の吸着性、脱臭性の定量評価のほか、強度、難燃性なども公的機関での試験を終え(2003年11月)、基準をクリアする製品が完成し、一般に販売できる条件が整った。

 3.当該取組との出会い
 道路建設等、建設現場で発生する伐採された木材は、以前は焼却処分されていた。このような状況は資源有効利用の面から極めて無駄であり、また、野焼き規制条例が公布されるなど、有効利用の方法を考えていた。
 1997年頃より、炭の粉末を原材料とするボードを発案し、独自に開発を進めていたが、“貝殻を1200℃高温で焼くと吸着力が上がる”ことが記載された文献に出会い、著者である新潟薬科大学及川教授との交流が始まった。同教授の指導を受け、炭焼き温度の多段階化、バインダーの選定などの開発を経て製品を完成させた。

 ※上記2社の視察研修事項は上記の他、多数ありますが都合により掲載致しませんが、お問い合わせにはお答え致します。


5.アンケートの実施
先進地事業視察についてのアンケート結果
 このアンケートは平成15年10月6日から8日にかけて当機構が主催した先進地事業視察の参加者を対象とし、無記名形式で行った。参加者16名(15事業所)のうち、15件(15事業所)の回答が寄せられ、回答率は93.8%であった。
1.各事業所の現状について
 Q1.各事業所の従業員数(パート、季節雇用者等含む)
従業員数
件数
30人未満
4
26.7
30〜49人
3
20.0
50〜99人
3
20.0
100人以上
5
33.3
合  計
15
100.0
 Q2.新分野進出についての対応
新分野進出についての対応
件数
進出済
2
13.3
実行段階(計画済)
5
33.3
検討中
7
46.7
考えていない
1
6.7
合  計
15
100.0

 異業種転換に関する視察の参加者であるだけに、各事業所の新分野進出についての関心はかなり高い。新分野進出については約半分の事業所が進出もしくは実行段階にあり、検討中を含めるとその割合は9割強に上る。

 参考までに、新分野進出についての対応を従業員数別に集計したものが以下の表である。
従業員数が30人未満
件数
進出済
0
0.0
実行段階(計画済)
1
25.0
検討中
2
50.0
考えていない
1
25.0
合  計
4
100.0
従業員数が30〜49人
件数
進出済
0
0.0
実行段階(計画済)
1
33.3
検討中
2
66.7
考えていない
0
0.0
合  計
3
100.0
従業員数が50〜99人
件数
進出済
1
33.3
実行段階(計画済)
0
0.0
検討中
2
66.7
考えていない
0
0.0
合  計
3
100.0
従業員数が100人以上
件数
進出済
1
20.0
実行段階(計画済)
3
60.0
検討中
1
20.0
考えていない
0
0.0
合  計
5
100.0
 サンプル数が少ないためはっきりとは言えないが、新分野進出済の2事業所がいずれも50人以上の事業所にみられるなど、今回の調査では従業員数が多い事業所ほど新分野進出への対応が進んでいる傾向があった。
 Q3.進出分野の種類と具体的な取り組み
  ※この設問はQ2で新分野進出について「考えていない」以外の回答をした事業所(合計14事業所)を対象とした。
進出分野の種類
件数
具体的な取り組み
農業分野
1
7.1
水耕栽培
林業分野
1
7.1
炭窯
水産分野
2
14.2
海中材及び関連事業 ほか
環境・リサイクル分野
4
28.6
水質浄化(4件)・木質バイオマス利用による発電装置
介護・福祉分野
2
14.2
無回答 ほか
建設関連分野
2
14.2
賃貸マンション・石張ブロック等二次製品
 I T分野
0
0.0
その他の分野
流通・小売,観光,インターネットによる情報収集 ほか
4
28.6
人脈活用による商材の開拓及び販売網の構築(流通・小売) ほか
合  計
16
100.0

※複数回答のため、各選択肢の件数の合計は対象件数を上回る

 今回の結果では環境・リサイクル分野が4件(28.6%)と最も多く票を集めた。また、水産,介護,建設の各分野がともに2件(14.2%)、農業,林業分野はそれぞれ1件(7.1%)という結果であった。
 具体的な取り組みについては、環境・リサイクル分野に対応しようとしている4事業所がすべて、汚泥対策を含めた水質浄化を挙げている点に注目したい。

 Q4.新分野進出をしない理由
  ※この設問はQ2で新分野進出について「考えていない」と回答をした事業所(1事業所)を対象とした。
 
 新分野進出をしない理由は「資金力・情報が不足。民間住宅の強化をしている」であった。

2.今回の視察について
 Q1.気付いたこと、感じたことなどの感想
・三矢工業
感   想
件数
新分野進出の困難さ
5
33.3
熱意・意欲・前向きな姿勢
5
33.3
市場性への対応(販売経路の確立など)の重要性
2
13.3
行政のサポート不足
2
13.3
独自性・視点の良さ
3
20.0
地域性の考慮・環境との共生
2
13.3
ハイコストに対する危惧
0
0.0
協業化・他事業者との連携の必要性
1
6.7
資金・技術・人材などの必要性
1
6.7
確実な(事業の連鎖などを含めた)計画性
2
13.3
情報収集能力の高さ
1
6.7
環境への配慮不足
0
0.0
その他
5
33.3
合  計
29
100.0

・山英建設
感   想
件数
新分野進出の困難さ
4
26.7
熱意・意欲・前向きな姿勢
3
20.0
市場性への対応(販売経路の確立など)の重要性
3
20.0
行政のサポート不足
3
20.0
独自性・視点の良さ
1
6.7
地域性の考慮・環境との共生
2
13.3
ハイコストに対する危惧
4
26.7
協業化・他事業者との連携の必要性
2
13.3
資金・技術・人材などの必要性
1
6.7
確実な(事業の連鎖などを含めた)計画性
0
0.0
情報収集能力の高さ
0
0.0
環境への配慮不足
1
6.7
その他
3
20.0
合  計
27
100.0

※複数回答のため、各選択肢の件数の合計は対象件数を上回る
 「予想していた以上に異業種への進出の難しさを実感させられた」 [両社] との声が多数を占め、「新分野進出の困難さ」(合計9件)を大きく裏付ける結果となった。
 同時に「リスクばかりを考えていては前進しないことを感じた」 [山英建設] 、「チャレンジ精神は前向きで立派」 [山英建設] など、視察先の「熱意・意欲・前向きな姿勢」(合計8件)に心を動かされた事業所も多い。
 「製品の効用がもっとPRされれば販路も広がると思う」 [山英建設] などの意見による「市場性への対応(販売経路の確立など)の重要性」(合計5件),「国・県の制度融資等の施策の不備により、行政不信を感じた」 [三矢工業]などの声による「行政のサポート不足」(合計5件)など、問題点も浮き彫りとなった。
 「独自性・視点の良さ」「地域性の考慮・環境との共生」「ハイコストに対する危惧」(ともに合計4件)は、いずれも新分野進出する上でポイントになるものである。
 Q2.企業経営に活かそうと思う事柄
・三矢工業
感  想
件数
地域性の考慮・環境との共生
2
13.3
熱意・意欲・前向きな姿勢
3
20.0
事業ノウハウの導入検討
2
13.3
行政のサポート
1
6.7
独自性・視点の良さ
0
0.0
協業化・他業者との連携
2
13.3
確実な(事業の連鎖を含めた)計画性
0
0.0
市場性への対応(販売経路の確立など)の重要性
1
6.7
その他
1
6.7
合  計
12
80.0


・山英建設
感  想
件数
地域性の考慮・環境との共生
2
13.3
熱意・意欲・前向きな姿勢
0
0.0
事業ノウハウの導入検討
1
6.7
行政のサポート
2
13.3
独自性・視点の良さ
3
20.0
協業化・他業者との連携
0
0.0
確実な(事業の連鎖を含めた)計画性
2
13.3
市場性への対応(販売経路の確立など)の重要性
1
6.7
その他
1
6.7
合  計
12
80.0

 「地域性の考慮・環境との共生」が合計4件と最も多かった。「街作りの発想は必要」 [三矢工業] との意見にみられるように、1−Q3の結果を含め、地域もしくは環境と共生する姿勢が今後より強く求められる傾向がある。
 続く「熱意・意欲・前向きな姿勢」「事業ノウハウの導入検討」「行政のサポート」「独自性・視点の良さ」はいずれも合計3件であった。「社長の強い思い入れ」 [三矢工業] や「資本力のある大手企業に対応するための差別化」 [山英建設] を図った企業経営に影響を受け、「炭窯の利用方法を検討する」 [山英建設]など、ノウハウを自社に活かしたいという意見は多い。一方、「県の制度等、調査し、活用できるものは使う」 [三矢工業] との意見にみられるように、行政のサポートを求める声もある。
 Q3.ご意見・ご要望
ご意見  ・  ご要望
件数
大変勉強になり、有意義であった
4
26.7
資金力・情報力などの不足のため新分野進出は難しい
4
26.7
協業化の必要性がある
3
20.0
行政のサポートが必要だ
2
13.3
視察先まで距離があるなど行程に問題がある
2
13.3
やる気が大事だと分かった
1
6.7
同業他社と苦しい状態を話し合えて良かった
1
6.7
他業界も視察する意味がある
1
6.7
合  計
18
100.0

※複数回答のため、各選択肢の件数の合計は対象件数を上回る
 「大変勉強になり、有意義であった」「資金力・情報力などの不足のため新分野進出は難しい」との意見が4件(各26.7%)ずつで同率でトップに上がった。「協業化の必要性がある」(3件)、「行政のサポートが必要だ」(2件)といった意見は資金面を含めた1社対応の限界を問いかけている。また、「視察先まで距離があるなど行程に問題がある」(2件)はもっともな意見であるが今回遠方に視察を依頼した背景に、新分野進出という特殊な理由により、近隣地域では視察の受け入れが困難であるといった事情があったことを酌んでいただきたい。

 〜アンケート集計を終えて〜

 現在、建設業界では公共事業の削減などを受け、長期間、厳しい情勢が続いている。そのため関連事業所は経費を節減する一方、生き残りをかけた新分野進出について大変注目している。
 アンケートの対象となった視察先は長野県北佐久郡の三矢工業と山梨県都留市の山英建設である。三矢工業は循環型産業を目的とした新しい農業に力をいれ、山英建設は廃木材を利用したシックハウス対策の室内ボードを生産している。共に建設業から新分野進出を果たしたとして、全国でも注目されている企業だ。
 今回の視察を通して改めて考えさせられたのは、各事業所が予想以上に経営の維持に強い危機感を持っているということである。しかし、新分野進出が現状を打破するための有効な手段と知りながらも、資本力等の不足、市場確保の困難さ、行政のサポート不足などの諸事情から、積極的に実行まで移せない事業所は現状では多い。だが地域・環境に貢献し、周囲の人と共存する方法や方向性を同じくする他事業所との協業化など、新分野進出を成功させるための選択肢はまだまだ残されているのではないだろうか。
 いずれにしても、視察先のやる気・熱意などが事業所に強い感慨を与えたことは確かである。これらの経験が新分野進出に向けて何らかの解決へのきっかけになるように強く願っている。